こんにちは!青野純と申します。
美大で日本画を学んだのち、
会社で商品を飾る絵を描いておりました。
現在は日本画の岩絵具で
個人の方からのご依頼を受けた
絵画制作をしております。
今回は初心者の方でも分かりやすいよう
日本画の描き方の流れを5ステップに分けて
解説していきます!
日本画ってそもそもなんだろう?と思われる方は
今後の記事で改めて解説しますので
お待ちいただけたら幸いです。
簡単に言うと岩絵具という天然や人工の
鉱石を砕いて粒子状にして作られた
顔料を使って描く絵画です。
(日本画と定義する要素は顔料以外にも
ありますが、今回は割愛します。)
岩絵具は多少扱いの難しさこそありますが
大変美しく、店内に並べられた様子は圧巻で
見ているだけでワクワクします。
この記事に辿り着いたということは
少しでもそれらに興味を持たれた方が
多いと思うので、ぜひ気楽な気持ちで始めて
日本画の世界を体験してみて欲しいです!
道具については下記の記事で解説しています。
まだお持ちでない方は
揃えるところから是非始めてみて下さい♪
今回の記事でもすぐに始められるよう
意識して書きましたが、
少々ざっくりとした説明のため
分かりにくい部分もあるかもしれません。
その場合は後々またステップ毎に
詳しく解説するので
今回はまず全体の流れを
掴んでいただければ幸いです!
それでは早速ステップ1から解説していきます!
ステップ1<スケッチ>
まずは描く対象を決めるために
スケッチから始めます。
人物、風景、動物、静物、様々な
描く対象物から自分の描きたいものを選び、
スケッチブックに鉛筆や水彩で
描いてみましょう。
必ずしも具象を描く必要は無いので
抽象画を描きたい場合は
その元となる要素を探した上でまず
ご自身のイメージをスケッチしてみて下さい。
日本画は古来より花鳥風月を
描く事が多かったので
今もそのイメージは強いかもしれませんが
現代に決まりは無いので
自由に描いていただいてOKです。
ただ、いきなり「自由です!どうぞ!」と
言われても困るかもしれないので、
初心者の方は身近な植物や風景から
探してみても良いかもしれませんね。
既に頭の中に絵のイメージがある場合も
一度それをスケッチブックに
描き出してみて下さい♪
ステップ2<下図>
スケッチが完成したら今度は構図や
背景含め実際の色を決めるための
下図を描いていきます。
いきなり本画(和紙を張った本番の画面)に
入るのではなく、まずは完成した時の
イメージを形にしていく工程です。
初めに描いたスケッチを
そのまま本画にする場合は
スケッチした絵を画面にどう配置するか
調整し、決めていきましょう。
岩絵具は様々な粗さの粒子状の顔料を
重ねながら描くのですが
間違えて色を消そうとしたりすると
画面上で色が濁ったり汚くなってしまいます。
なので、自分の想像通りの絵を本画で描けるよう
水彩等で準備するのがこの下図の段階です。
大きさは本画と同サイズの方が
この後転写する作業がスムーズに行えますが
小さめでも構いません。
ただ、小さすぎると拡大した際に
線がぼやけてしまうので
次の工程を考慮しながら決めると良いでしょう。
日本画三山と呼ばれる内の
1人である東山魁夷氏は
小下図、1/5の下図、大下図と
かなり用意周到に準備されていたようです。
この準備行程は描く人によって様々で
水彩だけで描く人もいれば本画と同様に
岩絵具を使って描く人もいますし
下図の枚数も1枚の人もいれば3枚の人もいます。
その場の思いつきで描きたいという人は
下図を飛ばしたりもしますし
絶対なきゃだめというものでもありません。
今回は基本となる工程の説明なので
初めはここから取り組んでみて、
描きながらご自身に合ったスタイルを
見つけられると良いかもしれませんね。
まずは水彩や色鉛筆などで完成イメージを
1枚用意できればOKです。
ステップ3<転写>
次はステップ2で用意した下図を
本画用の和紙を張った画面に転写していきます。
下図が本画と同じサイズなら
それをそのままトレーシングペーパーに
線を写した後、転写します。
サイズが異なる場合は本画と同サイズの物を
用意して下さいね。
新たに描くのは大変だと思うので
拡大コピーをしても良いです。
その場合、コピーをそのまま使用し
転写すれば良いのでトレーシングペーパーに
線を写す必要はありません。
次にトレースした絵
(又は本画と同サイズにコピーした絵)
を和紙を張った本画用の画面に置き
動かないように上を
マスキングテープで固定します。
両端と真ん中の3箇所くらいを止めればOK。
チャコペーパーを間に敷いたら
トレースした絵の線をペンまたは
鉛筆で上からなぞって転写していきます。
全て描き終えたら上の絵は外さず
少し持ち上げてきちんと全ての線が
本紙に転写されているか確認して下さい。
薄かったり、描き忘れがあった場合
もう一度同じ場所に絵を転写する事は
難しいので、ここでしっかり確認して
描き忘れがないようにします。
全て転写されていることが確認できたら
トレーシングペーパーを外して
ステップ3も完了です!
ステップ4<骨描き>
転写が出来たら今度はその上を墨で
なぞるのですが、これを骨描きと言います。
日本画では時折線を残した描き方もしますが
まさに絵の骨格となるような線です。
ですが、線を残す描き方をする場合を除き
上から色を重ねれば隠れる線なので
そこまで緊張して描かなくて大丈夫です。
多少線が太くなったり細くなったりしても
良いので、転写した線を上から
細い筆でなぞっていきましょう。
この時に使用する筆は面相筆という
細い線を描くのに最も適した筆を使うことを
お勧めします。
全てなぞる事ができたら次でいよいよ
彩色に入ります!
ステップ5<彩色>
ようやく色塗りに入りますが、
モチーフに色を塗る前に
まずは下地の色を塗っていきます。
この時に使用するのは胡粉と水干絵の具です。
水干絵の具は天然の黄土、岱赭(たいしゃ)や
胡粉の白色顔料を染料で染めたものがあります。
黄土や岱赭は昔から大和絵の下塗りとして
多く使用されていたので
現代でも使う画家は多いかもしれません。
ですが、ここも決まりはないので
好きな色で下地を刷毛で塗っていきましょう。
まずは胡粉を乳鉢に入れ
乳棒で細かくしていきます。
(粉末胡粉はこの工程を省いて大丈夫です。)
細かくした胡粉をお皿に盛り
膠液を少し加えます。
少しずつ胡粉と混ぜて団子状にして下さい。
団子をよく練った後、お皿にそれを
100回ほど叩きつけます。
できたら団子を両掌で細い紐状にします。
この時に紐が切れやすかったら
膠と胡粉がうまく混ざっていないので
もう一度団子状にして叩きつけて下さい。
最後にまた団子にした胡粉を
絵皿に平たく貼りつけ、膠液を少し加えます。
胡粉を指でくるくると円を描きながら
ゆっくりと溶かしていきます。
膠液を加える際、液が固まっていたら
湯煎で溶かして下さい。
電熱器があれば便利ですが
無ければコンロでも大丈夫です。
ただし沸騰はさせないように注意して下さい。
指を入れられる程度の温度で
ゆっくり溶かしましょう。
(高くて60°くらい)
胡粉を溶く作業は少し時間がかかりますが
少しずつ水を加えながら
ゆっくり溶かして下さい。
液状になったら完成です。
刷毛に溶いた胡粉を含ませ、
絵皿と刷毛に含んだ絵の具の量が
均一になるように混ぜます。
必要なら再度水を加え
濃度の最終調整をします。
この時の感覚は体で覚える事も
必要になってくるかと思います。
初めは薄塗りを意識して
塗っていくと良いでしょう。
注意したいのは
いきなり厚塗りはしない事です。
日本画は画面にムラなく均一に塗るのが
難しい画材なので、厚塗りをすると
一気にムラができてしまいます。
薄めに重ねていくのが綺麗に塗るコツです。
日本画の絵の具は塗った時と乾いた時で
色が変わるので、初めは戸惑うかも
しれませんが、徐々に慣れます。
胡粉を塗って乾かした時に
骨描きの線が消えてしまったら
水刷毛で画面を撫でると絵の具が落とせるので
濃すぎた場合は一旦落としましょう。
重ねる際は一層毎に乾かしながら塗って下さい。
乾いていない内に上から重ねても
ムラになってしまいます。
初めは横方向に塗り、
乾くのを待って今度は縦方向と
刷毛の向きを変えながら重ねていくと
ムラを少なくできます。
胡粉が乾いたら今度は好きな色の
水干絵の具を塗っていきましょう。
これも決まりはないので白い背景が好きでしたら
そのままでも大丈夫です。
また、はじめから胡粉と水干を混ぜて
塗る方法もあります。
その場合は胡粉と水干絵の具を
別々に溶いた後、合わせると良いです。
それでは水干絵の具の溶き方を説明します。
まず、絵の具の塊を指で潰すか
紙に挟んで上から筆の肢を使って
麺棒のようにコロコロと上から押し潰して
粉状にします。
細かくできたら絵皿に移し
少量の膠液を加えて練り混ぜていきます。
ダマにならないようしっかり練れたのち
さらに膠液を加え、なめらかになるよう
溶いて下さい。
次に水を加えます。
膠液と水は1:1くらいにするのが目安です。
下地は一色でも良いですが深みを出すために
色を変えながら重ねていっても
良いかもしれません。
ここはご自身の絵のイメージに
近づくように工夫しましょう。
この時も濡れている画面上で
何度も繰り返し刷毛を動かすと
先に置いた絵の具が剥がれてきてしまうので
なるべく少ない動きで
色を置けると理想的です。
下地が乾いたらいよいよモチーフに
色を塗っていきます。
岩絵具の溶き方は水干と同様です。
ですが、岩絵具は番号によって
粒子の粗さが異なり
数字が低いほど粗く、高いほど細かくなります。
粗い岩絵具は絵の具を塗るというより置いていく
感覚に近いので、よりムラになりやすく
扱いが難しいため初心者の方は
11番〜13番くらいの細かい粒子から始めると
描きやすいと思います。
モチーフを描く際も何層にも色を重ねて
置いていくと色の深みが増していきます。
水筆でぼかしたり
あえて乾かない状態で重ねてみたり
色々な塗り方を試して工夫すると
面白いですよ。
描きたいモチーフや表現によって
様々な描き方があるので
彩色の詳しい方法は
また改めてご紹介しますね。
描きながら自分で発見するのも楽しいので
まずは下図で描いたイメージに近づくよう
ぜひ挑戦されてみて下さい♪
以上、大まかな日本画を描く流れを
ご紹介させていただきました!
まとめ
いかがだったでしょうか?
日本画にはこのように
1スケッチ、2下図、3転写、4骨描き、5彩色
これら5つの基本的な工程があることを
解説させていただきました。
少々面倒に感じたり、乾くまで待つ時間に
焦れったさもあるかもしれません。
ですが、絵皿に指で絵の具をゆっくり解く時間や
乾くまでの待ち時間含め
段々とその一つ一つの作業が
とても豊かで愛おしく感じられてきます。
そのゆったりとした時を楽しむのも
日本画の醍醐味だなと個人的には感じます。
一般的にはまだ油絵や水彩等よりも
認知度が低い日本画の岩絵具ですが
だからこそ、この素敵な画材が
より多くの人に親しまれる事を願い
発信していきたいと思います。
最後まで読んでいただき
ありがとうございました!
今回はざっくりとした説明でしたが
今後はステップ毎により詳しく
解説する予定です。
次回はステップ1のスケッチから
掘り下げていくので
どうぞお楽しみに!!
一緒に楽しく絵を描いていきましょう♪
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